hiragramhiragram

AI時代のコミュニケーションに期待する最低限の責任感

2025-04-21


はじめに

最近、エンジニア以外の職種でもAIを活用する動きが社内で加速している。企画、マーケ、カスタマーサポートなど、これまであまり技術に関与してこなかったメンバーがAIツールを使って、情報の整理や文章作成、アイデア出しなどに取り組むようになってきた。

これはとても良い流れだと思う。一方で、AIとの向き合い方や、AIが生成した情報をどう扱うかについて、よく考察された共通認識がないまま進んでいることに危うさも感じている

この記事では、実際の業務の中で感じた違和感や課題をもとに、「これからのAI時代に必要なコミュニケーションの基本姿勢」について考えてみたい。


自分で判断できないことをAIに委ねない

AIが出した情報に対して、自分で正否や適切さを判断できないまま、それを業務に使おうとするのはとても危険だ。その情報の正しさを評価できない状態でアウトプットしていることになるから

たとえば、医療の専門知識がない人がAIを使って病状に関する説明文を書いたり、法律の知識がないままAIに契約文書を作らせたりするようなケースがある。AIの出力がもっともらしく見えても、自分で判断できない分野でそのまま使うのは非常にリスクが高い。

だからこそ、AIを使うときには次のような基本姿勢が求められる:

  • 出力内容の意味を自分で理解し、評価する
  • そのまま使うのではなく、自分の責任で修正・検証する
  • 自分で判断できない領域では、自分がAIを扱うのではなく、最初から専門家に頼むことを検討する

専門家の力を借りるというのはもちろん正しい。でも、「わからない人がAIに書かせたものを専門家にレビューしてもらう」という形になると、その専門家にとっては手間が増えているだけの可能性がある。

それなら最初からAIを挟まず、その人に直接依頼するべきで、AIを使うかどうかは専門家自身が判断すればいい。依頼する側が気を利かせたつもりでAIを噛ませることが、かえってマイナスになることもある。


個人の生産性向上が他人の負荷になっていないか?

「AIで生産性を上げましょう」という言葉はよく聞くし、実際その通りだと思う場面もある。だが、アウトプットの検証や最終確認を他の誰かに丸投げしていないか? という視点は常に持っていたい。

たとえば、エンジニア以外の職種の人が、技術的な文脈を含むお知らせや説明文をAIで作成するようなケース。内容はそれっぽく見えるかもしれないが、技術的に正しいかどうか、適切な用語や構成になっているかを判断するのは簡単ではない。

結果として、エンジニアに「技術的に問題ないか見てほしい」とチェックを依頼することになり、作成者の作業は効率化されたかもしれないが、エンジニアの作業量が増えているということになる。

つまり、「個人の生産性向上」の裏で、組織全体の工数はむしろ増えているという逆転現象が起きる可能性もあるということ。


AIが生成したものだろうが他者に提供する時点で自分の責任

最近では、会議の議題や議事録の作成にAIを活用する例も増えてきた。それ自体は便利なことだけど、そこで注意すべき点がある。

まず、議題や提案がAIによって生成された場合:

  • その内容は「誰の意見」なのか?
  • AIの提案に、どれだけ自分が賛同しているのか?
  • 議論をどう進めたいと思っているのか?

こういったことを明示しないと、対話の出発点が曖昧になり、議論の軸が定まらない

また、AIが作成した議事録や要約をそのまま提出する場面でも同様だ。「AIが書いたから自分は責任を負わない」という態度ではなく、“自分の提出物”として出す以上は、その内容に責任を持つべきだと思う。

もちろん、皆が皆、無責任にAIを使っているわけではない。ただ、AIの出力との向き合い方や、その扱いに対する意識の濃淡には大きな個人差があるのも事実だ。

無闇に疑ってかかりたいわけではないので、AIの出力を活用する側として、「この出力はどのような立場から提示されているか」「自分の意見が含まれているかどうか」をあらかじめ開示してくれると、とても助かる。

たとえば、

  • 「AIに聞いたらこう言われて、私も同じ意見です」
  • 「よくわからないのでAIに聞きました。自分の意見は特にありません」

このどちらかを明示してくれるだけで、議論の進めやすさは大きく変わってくる。


おわりに

AIの活用はこれからも加速していく。それは歓迎すべきことだと思う。ただし、AIを正しく活用するためには、それにふさわしいリテラシーと姿勢が必要になる

  • 自分で判断できる範囲で使う
  • 他人に丸投げしない
  • AIの出力を使うなら、自分の言葉として引き取る

こういった考え方が、組織の中に自然に浸透していくことを願っている。

共感してくれる人がいたら、ぜひ一緒に「AI時代の建設的なコミュニケーション」について、考えていけたらうれしい。

このエントリーをはてなブックマークに追加

Post